「音を出したら即死」というキャッチ・コピーで大ヒットしたホラー映画『クワイエット・プレイス』の続編、『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』が6月18日に公開される。主演のエミリー・ブラントに、監督でもあり夫でもあるジョン・クラシンスキーとの映画作りについて訊いた。
リアルライフのカップルが映画でカップルを演じるのは禍(わざわい)のもと。ハリウッドで長い間信じられてきたその定説を、ジョン・クラシンスキー監督の「クワイエット・プレイス」が覆した。2018年に公開されたこのホラー映画に、クラシンスキーとエミリー・ブラントは夫婦役で登場。目は見えないが音に反応するクリーチャーが地球を襲うというユニークなコンセプトが大受けし、予算1700万ドルで製作されたこの映画は、全世界で3億4,000万ドルを売り上げる大ヒットとなった。
「私たちの映画に関しては、現実の世界でも夫婦だというのがむしろプラスになったと思っています。映画の中で私とジョンは離れ離れのシーンが多いけれど、観客は現実の世界で私たちが結婚していると知っているから、家族の絆の強さを忘れないでいてくれたのではないかと思うんですよね。ジョンに監督としての才能があそこまであったというのは、私たちふたりにとっても新たな発見でした。彼自身が俳優だから、役者の演出はきっとうまいだろうと思っていましたが、カメラで映像をどうとらえるかなど、テクニカルな面でも優れているとわかったんです。どんな映画にしたいのか、彼には明確なビジョンがあったんですよ」
それでも、続編を作ることについては、ふたりとも消極的だったという。夫の監督デビュー作に夫婦で共演したらサプライズヒットになったという特別な経験に、なんらかの形で傷をつけることをしたくなかったからだ。
「1作目の成功は私たちがまったく期待していなかったものでした。だから、あれはあれでとっておきたかったんです。でも、私たちがノーと言っても、スタジオは強引に作ろうとするかもしれない。実際、彼らは20人ほどのライターを集めて、続編のアイデアを出させていました。そこへジョンが、『もし僕が次を作るなら、こういう話にする』と言ってきたんです。それがすばらしくて、私は『そういう映画なら絶対に出たい!』と興奮しました。それは、1作目からとても自然な流れでありつつ、もっと世界が広がる、奥深いストーリーだったのです」
実際、「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」は、舞台が広がり、登場人物の数もずっと多く、1作目よりかなり大規模な作品に仕上がっている。だが、常に危険が迫る中、家族がお互いを守ろうとする話であることに変わりはない。愛する夫(クラシンスキー)と家を失ったエヴリン(ブラント)は、長女(ミリセント・シモンズ)と長男(ノア・ジュプ)、生まれたばかりの赤ちゃんを連れ、安全な場所を求めて旅に出る。そこで出会うのが、わが子を失い、ひとりで廃工場に隠れている男性(キリアン・マーフィ)だ。今作ではミリセント・シモンズとノア・ジュプが演じる子供たちに大きな重点が当たり、彼らが恐怖や困難を克服していく姿を見せられるのも、感動を深める。1作目では、どんな形でクリーチャーが地球にやってきたのかの説明がなかったが、続編は冒頭で時間をさかのぼって「第1日目」からスタート。その後すぐに1作目のラストに戻り、話を続けていく形だ。1作目の最後でクラシンスキーが演じる夫は子供たちを守るべく死んだため、今回彼が登場するのは冒頭のシーンだけである。
「今作は1作目よりずっとビッグで複雑だから、監督に集中できたのは彼にとって良いことだったと思います。より大きなチャレンジを、ジョンはすごく楽しんでいました。たとえばオープニングの『第1日目』の、私が街で車を運転していて突然クリーチャーに襲われるアクションたっぷりのシーンは、CGIなしの一発撮りでやったんですよ。あのシーンのためにはドイツから特別の機材を注文し、私たちは2週間かけてリハーサルをしています。何かひとつでも間違いが起こったら大変なことになるから、みんなあのシーンには反対でした。でも、ジョンの頭の中にはあのビジュアルがあって、彼はどうしてもやりたかったんです。撮影当日、私の車の上に乗っていたスタントドライバーに、私は『私の命はあなたにかかっているのよ。あなたが上手いドライバーであることを願うわ』と言ったら、『僕は最高のドライバーですよ』と言われました(笑)。あれは本当にアドレナリンの走る経験で、カットがかかった後もしばらく震えがとまりませんでしたよ。一緒に車に乗っていた子役は『面白かった!』と言っていましたけど(笑)」
そんな迫力満点のオープニングシーンからずっと緊張感たっぷりに引っ張っていくこの続編は、パンデミックで映画館に人数制限があるにもかかわらず、北米では初日の3日で4700万ドルを売り上げ、絶好のスタートを切った。おそらくスタジオは早くもクラシンスキーとブラントに3作目をせがんでいるに違いない。ブラントがこの2作を通じて学んだ夫婦でのコラボレーションのコツは、「お互いをリスペクトすること」。
「お互いの仕事のやり方に敬意を持ち、我慢強く接すること。それに、もし何か言いたいことがあるなら、現場に向かう車の中で話し合うようにして、たどりつくまでに解決するようにしました。ほかの人の目の前で揉めることのないように。でも、私たちは仕事上の相性が、もともと良いと思います。テイストが似ていますし、演技でも、『今のは良かった』と思う時が同じですし。自分たちは本当にラッキーだと、私たち夫婦は感じています」
『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』
音に反応して人類を襲う“何か”によって文明社会が荒廃した世界を舞台に、過酷なサバイバルを繰り広げる一家の姿を描き、全米でスマッシュヒットを記録したサスペンスホラー「クワイエット・プレイス」の続編。6月18日全国ロードショー。