ダブレット(doublet)の2022年春夏コレクションが、東京・三鷹オーガニック農園で2021年6月27日(日)に発表された。テーマは「My Way」。
長閑な農園で…
“逆再生”することで全貌が明らかになる2021年秋冬コレクションのショーなど、見る者を圧倒させるユニークなショーを披露してきたダブレット。デザイナー・井野将之が今季の発表の舞台に選んだのは、閑静な住宅街にある緑豊かな「三鷹オーガニック農園」だ。草や土の独特な香りが漂う会場に到着すると、思わず微笑んでしまうほど愛らしい山羊たちが出迎えてくれた。
会場には、穏やかな農園の景色に相応しい、陽気な音楽が流れている。しかし、ショーのスタート時刻になるとサイレン音が…。観客の不安と期待が最高点に達した途端、爆音のパンク・ロックと共にショーが開幕した。
パンク・ファッション×食物?!
逆立てられた髪や革ジャン、ダメージジーンズ、裾が裂けたニットドレス、チェーンアクセサリーなど。披露されたのは、パンク・ファッションを彷彿させるものだが、“何かがおかしい”。その違和感の原因は、パンク・ファッションと相反する雰囲気を演出する“食物”のモチーフたちだ。
例えば、パンキッシュなネックレスやボンバージャケットと一緒に提案されたベストには、キウイの断面をデザイン。廃棄されるはずのバナナの茎を糸にして編み上げたルーズなニットには、バナナのデザインをのせた。ニューヨークのパンクバンドのアルバムジャケットを彷彿させる、エネルギッシュなルックスが特徴だ。
革ジャンには、危なげな赤い傘が目を引く“毒キノコ”をオン。実はこのジャケット、キノコ由来のレザーが使われているそう。そんなエコフレンドリーなジャケットにあえて“毒キノコ”を描くという、ユニークな掛け合わせも印象的だ。
ホワイトやグレーなどシンプルなカラーで構成されたデニムのセットアップは、規則性のない波線が“木の年輪”を彷彿させるプレイフルなデザインで。複数の古着のデニムを積み重ねて強い圧力で密着させ、削ぐことで、ナチュラルな風合いを表現したという。
今季はコラボレーションアイテムも豊富なラインナップで展開された。スイコックとコラボレーションしたレオパード柄のサンダルは、裏に“肉球”をデザインした遊び心溢れる一足。ビッグシルエットのテーラードジャケットは、洋服の青山のジャケットを解体・再構築し、インパクト抜群のルックスに仕上げた。
いい子なやり方で作る“悪い服”
コレクションを俯瞰して見てみると、エコフレンドリーな素材や仕組みを採用しながらも、反抗的でパンクな服ばかり。これについて井野は、「環境に良い素材や仕組みで作っている服だからかっこいい」と謳われる現在のファッションに対する<疑問>を表現したという。ファッションとは本来、見たり着たりすることで気分が高揚し、誰かに会いたくなったりどこかに行きたくなったりするものではないだろうか──。そんな想いを胸に、「いい子なやり方で作る“悪い服”」という、“ダブレット流”のエネルギッシュでユニークなコレクションを完成させた。